音楽脳のつくり方(1)
この100日リレー・レッスン法では、スケールやアルペッジョを楽譜で見せません。
そらで覚えて、弾けるように促します。
市販の楽譜には、カデンツまで一つ一つ書いた丁寧な教本もありますが、そういった譜面も使うことなく進みます。
これは、『音符を見なくても弾ける』経験を増やすことと、弾く量を増やすためです。
100日リレー・レッスン法で目指すのは、体の感覚を養い、弾ける体・動ける体を作ることです。
体を作るというと、何やらジムで筋トレでもするかのようです。
でも、あながちそのイメージも、間違いではないのです。
スケールやアルペッジョは、言うなれば音楽をやるための筋トレ・脳トレのようなものです。
これを通して、音楽脳をつくるのです。
ただし、それをやるには条件があります。
①週に2日以上やる
人の記憶には、短期記憶と長期記憶があります。
何かをやり始めたとき、最初は短期記憶として脳にインプットされますが、2週間で3回以上使うようになると、短期記憶から長期記憶に移っていくそうです。
長期記憶に移ると、その後使わない期間があっても、一度定着した記憶は残っていきます。
また、記憶の定着には周期を持たせることが大切で、ただ練習を続けるだけよりも、適度な休憩や睡眠をはさむことで、定着しやすくなると言われています。
筋トレや練習は毎日やれたら、もちろん素晴らしいことですが、週に2日というサイクルでも、周期的には十分定着できると考えられます。
②音符(楽譜)を見ない
記憶には、「意味記憶」と「運動性記憶」の2つがあります。
意味記憶とは、いわゆる暗記のことで、関連のないものを意味として結びつけて、記憶することです。これは覚えにくく、かつ忘れやすいと言われます。
一方、運動性記憶は、体を動かすことによって記憶することです。
自転車に乗れるようになって、しばらく乗っていなくても体が覚えているように、運動性記憶は覚えるまでに時間はかかりますが、一度覚えたら忘れにくい特徴があります。
ここで取り組みたいことは、体の感覚を養い、動ける体・弾ける体をつくること、つまり一連のテクニックを運動技能として記憶させることです。
楽譜を読むことなく、音符がなくても弾けるようにすることで、運動性記憶として定着させます。
それによって、いつでもテクニックとして引き出せるようにするのです。
(自分で楽譜を書くことは、おすすめできます。書いて覚えることは、知識として定着させるためにも有効な方法です。)
③アウトプットを増やす
新しいことを覚えるには、アウトプットが大切というのはよく言われることです。
声に出す、文字に書く、人に伝える・教えるなど、自分の体を使ってやれることは、すべてアウトプットです。
つまり、これも運動性記憶なのです。
よく、おしゃべりな人は語学の上達が早いと言われます。
それは、学んだ新しい言葉を、おしゃべりして、運動性記憶をつかって次々と定着させているから!なのです。
ところで、アウトプットには、記憶を定着させるのに適した比率があるそうです。
インプット3に対して、アウトプット7というのが、もっとも効率的な比率だと言われています。
もしこれが本当なら、普段の私たちは、ちょっとインプット過多かもしれません。
楽典の知識はあっても、その知識を曲の中で満足に使えていないとしたら、あるいは満足に弾けていないとしたら、それはやはり実践としてのアウトプットが十分でないということです。
もしこれまでに十分曲を弾いてきているなら、ここでの筋トレ・脳トレは、弾く量=アウトプットの総量を増やすことになります。それだけで、十分に効果があると考えられます。
もしなかなか曲を弾ける時間がなくて、でもアウトプットを確保したいなら、曲を弾くのか、筋トレ・脳トレをやるのか、どちらをやるかは選べばよいでしょう。
いずれにしても、知識を運動性記憶によって、実践的なものにして記憶し、技能として身に付けること。弾く総量を増やすこと。
これが、音楽脳をつくり、テクニックを育てる方法と言えそうです。
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